シーマは、多彩な業種のお客様に映像音響システムを提供し、機器の販売・レンタルを通じて最高の映像体験をお届けしています。しかし、日々の案件対応だけでは、すべての機材に関する技術力や運用ノウハウを十分に磨ききることはできません。そこでシーマでは、自社主導による「自主企画」を積極的に実施。所有機器の新たな活用法を探り、スタッフの経験値とチーム力の向上を目指しています。
その一環として取り組んでいるのが、「日本の祭り」を舞台にしたライブ配信の実証です。過去には、徳島県・日和佐で行われた「伝統文化・伝統芸能サミット」でもライブ配信を実施しました。
伝統文化・伝統芸能サミット 事例ページ:https://www.cima-net.co.jp/case-study/event/15825/
そして今回は、最もエキサイティングな日本の祭りの一つとして知られる、石川県・能登半島宇出津の「あばれ祭」に挑戦。多くの観客が熱狂する中、デジタルスイッチャー「KAIROS」と、シーマ独自開発の中継車「CONNECT車」を用い、迫力ある映像のライブ配信に挑戦しました。
能登半島宇出津のあばれ祭は、巨大な灯籠を載せた山車「キリコ」と、荒々しく担がれる「神輿」が町中を練り歩く、迫力満点の祭りです。
このダイナミックな展開をライブ配信で追いかけるのは、想像以上に困難でした。撮影すべきスポットが町内の各所に分散しており、それらを網羅して映像を送信するには、通常、大量のケーブル配線か、非常に高価な無線中継システムが必要になります。
しかし、キリコや神輿の通るルートにケーブルを這わせることは、祭りの進行を妨げてしまうため現実的ではありません。かといって、放送局並みの中継機材を導入するには、巨額の予算が必要です。
そこでシーマは、こうした厳しい条件下でも対応できるシステムの構築に踏み出しました。目指したのは、無線でカメラが自由に動きながら、安価かつ安定した映像配信を実現すること。さらに、音と映像の同期、そして視聴者を飽きさせない演出。今回のあばれ祭では、この3つの技術的チャレンジに挑戦しました。
今回の撮影には、業務用カメラではなくスマートフォンを採用しました。スマートフォンなら Wi-Fi接続能力を備えつつ機動力があり、観客で溢れる現場でも自由に動き回れます。課題は、スマートフォンの近くに安定したWi-Fi環境を確保し、インターネットに接続すること。
そこで、スカパーJSATの衛星を用いた「Satcube」とSpaceX社の「Starlink」でインターネットに接続。さらにファーウェイ社の無線伝送システムで撮影現場近くまでネットワークを延ばし、スマートフォンのすぐそばにWi-Fi環境を構築しました。ネットワーク構築にあたっては、キッセイコムテック社様とファーウェイ様に機材・技術の協力をいただきました。
今回の解説席は、能登町役場様よりお借りした会議室を使用しました。電源・有線インターネット回線・冷房が完備され、仮設スタジオとして申し分のない環境です。ここに、シーマが手配した司会者と祭りOBの解説者が入り、カメラ3台とマイクで収録を行いました。
演出は祭りの進行に合わせて計画し、中継ができない神輿の移動時間には当日撮影した素材を編集したVTRを適宜挿入。視聴者が退屈せず、「神事」としてのあばれ祭を楽しく深く理解できる内容となりました。
解説席の背景には、能登高校書道部に依頼し、祭りへの情熱と復興への思いを込めた揮毫を掲示しました。地元の学生たちが心を込めて書き上げた力強い文字が地域の想いを映し出し、地元の人も遠方の視聴者も含め、配信を通して一体感が生まれました。
解説席のあるプレハブの傍には、今回のオペ卓となる「CONNECT車」を駐車する許可をいただきました。この車1台で、KAIROSを使った映像音響のスイッチングとインターネットへの配信を実現することができます。KAIROSに入力する映像は、解説席のカメラ3台、祭り現場のスマートフォンカメラ2台、屋外ネットワークカメラ1台に加え、約10本のVTRやテロップ、待機画面の静止画など多岐にわたります。これらのソースを、音声のミックスも含めて二人だけでスイッチングし、配信映像を生み出しました。KAIROSの高い能力と、それを最大限に引き出すシーマのオペレーターの長年の経験があってこそ成し遂げられました。まるでテレビ番組のようなリッチな演出を実現することができました。
1日目
7月4日(金) 20:30~
2日目
7月5日(土) 22:00~
当日のライブ配信では、2日間で総視聴回数が15,000回を超え、全国各地から多数のコメントをいただきました。(以下、一部抜粋)
「地元の方々の思いや熱気が伝わってきました。」
「故郷にこんな凄いお祭りがあるのは羨ましい限りです。」
「宇出津出身の母と一緒に見ています。」
「宇出津出身です。今年は帰れないのでライブ配信で楽しんでいます。最後まで怪我せず楽しんでください。」
「ちょうさ!(神輿の掛け声)」
宇出津祭礼委員会 新谷俊英委員長より
「田舎の町の祭りをこのように世界に発信していただいて、シーマ様には感謝に絶えません。ありがとうございました。」
株式会社シーマ
プロジェクト開発推進室 プロダクト開発推進グループ
上野 正幸
たくさんの方々にご協力いただき、大きなトラブルもなくライブ配信を行うことができました。
ただ、さまざまな課題も浮かび上がりました。今回の技術的挑戦は、安価で気軽に使えるシステムで安定した配信環境を作ることでしたが、それを実現するためのポイントは、デジタルとアナログの組み合わせにあると改めて感じました。
人が大勢集まるイベントでは思わぬ電波障害が生じるため、ワイヤレスでの映像伝送には不向きな場面もあります。アンテナをどの位置に立てるか、どこなら見通しがよく電波を受けやすいか、必要な部材は何か、どうすれば費用を抑えて仮設環境を作れるか。こうしたポイントをひとつひとつ検討しました。
今後も新しい機材の情報を日々収集し、使えるシステムに組み上げることで、より良い配信環境を作れるようにしていきたいと思います。また、離れた場所にいるカメラマンと仮設スタジオとの間のコミュニケーションも重要です。今回は複数の無線回線を用意して、円滑なやり取りを維持しました。
さまざまな課題を解決するため、関連メーカーとの協力体制をさらに深め、引き続きチャレンジと検証を重ねていきたいと思います。
※他社様手配
※他社様手配
シーマでは、祭りはもちろん、音楽やスポーツなど多彩なイベントのライブ配信を承っております。ご希望の予算や規模に合わせて最適な機材と経験豊富な技術者をご用意し、臨場感あふれる映像をお届けします。生の感動をより多くの方々に届けるライブ配信、ぜひ一度ご相談ください。
お問合せフォーム︓https://www.cima-net.co.jp/contact
KAIROS特設ページ︓https://www.cima-net.co.jp/sp-contents/11823
CONNECT⾞特設ページ︓https://www.cima-net.co.jp/sp-contents/14086
Panasonic様 KAIROS事例︓https://connect.panasonic.com/jp-ja/case-studies/cima
ITmediaNEWS「ライブ配信特化の“ネット中継⾞” テレビ局でもないのに作った⼤阪の会社を訪ねてみた」︓https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2302/15/news130.html
キッセイコムテック株式会社:https://www.kicnet.co.jp/
華為技術日本株式会社:https://www.huawei.com/jp/
デジベント株式会社:https://www.digivnt.jp/