CIMA LABORATORY

雑誌「空間-ku:kan」で連載されている「ニシマルchat!」
株式会社光和の西様と弊社の石丸が映像機器について語り尽くします。

映像のチカラが生み出す空間の魅力

会議や展示会、ミュージアム、商業施設などで幅広く利用されているプロジェクター。鞄に入れて持ち歩けるモバイルタイプから、大規模なイベント、ライブで活躍する大型タイプまで豊富にモデルが用意され、最も利用シーンが幅広い映像機器と言える。特に最近では、巨大な建物をエンターテインメント装置に変えてしまうプロジェクションマッピングの流行で、プロジェクターの存在感とビジュアル演出のスゴさが、広く一般にも知れ渡った。空間演出装置としてますます利用価値が高まるプロジェクター。今回ニシマルのお二人には、エプソンが2016年11月に発売を開始した、同社のフラッグシップモデルについてChat!してもらいます。映像装置の大事なところって“映像”だけじゃないんだと知りました。

(アマチュア司会者 本誌 中田 昌幸)

 


西 雄基
Takeki Nishi
光和 レンタル部課長

1970年 東京生まれ。学生時代から携わった料理の世界から心機一転、イベント業界への転身を決断。
1991年KOWA入社。入社1年目からコンサートツアーや多くのステージで映像オペレーションを担当する。近年は企業イベントや展示会にまで分野を広げ、システムプランナーとしても活動している。多趣味の中のひとつは、出張先での寿司屋探訪。また、ワインの知識と保有量は、趣味の域をとうに超えている。


石丸 隆 Takashi Ishimaru
シーマ 常務取締役

1969年名古屋生まれ。幼少期より大阪に移住し以来大阪在住。
1990年シーマ入社。入社後すぐに海外イベントの現場に参加。以降、映像オペレーターとして海外のイベント現場に多く従事する。セールスエンジニアとしても長年にわたり企業式典や展示会をはじめ、あらゆる分野の現場を担当。
2009年より現職。実務経験を活かし、多方面での商材提案や企画、業界の拡大に注力している。


四方 寛人
Hiroto Yomo
セイコーエプソン ビジュアルプロダクツ事業部 VP 企画設計部

2000年セイコーエプソン入社。ソフトウェアエンジニア、ホームプロジェクターの商品企画を経て、2006年より高光束プロジェクターの商品企画を担当。国内外のクライアントや販売店とのコミュニケーションを通して商品企画に反映させることを重視。商品に関する意見・要望を迅速に社内に還流し、魅力ある商品の開発やサービス改善に取り組む。プロジェクターにより新しいビジュアルコミュニケーションの創出を目指している。

クラス最軽量の2万5000lmを実現

――いよいよエプソンが2万5000lmとういう高輝度レーザープロジェクターを市場投入します。まずは四方さんから、この商品のコンセプトや開発経緯、特長などをお話ししてください。

四方 これまで弊社には、ライブやプロジェクションマッピングなどの大型イベントで活躍できる2万lmクラスのプロジェクターがありませんでした。ほかのカテゴリでは販売台数もトップでしたが、やはりこのクラスでもしっかり市場の要求に応えなければ、という思いは社内に長年ありました。そのホンキ度を見ていただける商品がようやくご提供できました!というのがこの「EB-L25000U」になります。

――各社がレーザー方式を採用する中で、エプソンならではの強みはありましたか。

四方 弊社は、プロジェクターの心臓部である液晶パネルそのものをつくっているので、レーザーの高出力に合わせて、耐久性と機能性の高い液晶パネルや周辺の光学系部品を開発できたことです。これで効率的で無駄のない設計ができ、このクラスでは業界最軽量を達成することができました。重量はハンドルを入れて71.3kg、それにレンズが10kgくらいです。

――価格は。

四方 あくまで参考価格ですが、1200万円ほどです。

――ほかにレーザー(方式)ならではの特徴はありますか。

四方 なんと言っても光源寿命が飛躍的に向上したことです。EB-L25000Uをはじめとする新レーザープロジェクターのラインナップは、2万時間のメンテナンスフリーを実現しました。これはランプ(方式)の10倍近い寿命です。また、プロジェクター本体を真上や真下に向けて投影することはもちろん、全方位360度設置が可能となりました。これにより天井や床などへの投射もでき、イベントシーンなどで用途が広がると思います。レーザーではランプとは違う冷却方式(※1)が採用できるので、姿勢が自由に変えられるのです。

――設置の自由度が高くなるのは、イベントやライブには大変便利だと思います。

四方 そうなんです。このクラスのプロジェクターには、石丸さんや西さんのような、イベント現場の人たちが、繰り返される設置・撤去・輸送というワークをどれだけやりやすくできるかが重要です。そのためには小型・軽量はもちろんですが、設置性の良さとか、堅牢性の高い商品をつくらなければなりません。EBL25000Uには取っ手となるハンドルを標準装備しています。これによりイベントなどでの取り回しがとてもスムーズに行えます。今回EB-L25000Uはグッドデザイン賞を受賞しているのですが、評価ポイントはハンドル標準装備でした。また、EBL25000Uの本体性能を評価してくださった世界最大手のドイツ・ラング社はEBL25000Uの専用金具を開発してくれました。さらに、プロジェクターの内部にも金属フレームやベースプレートを入れて、強固なボディをつくっています。

西 ほとんどのメーカーさん、フレームなどは真剣につくらないよね。「ユーザーが好きなようにつくればいい」っていう見方をするから、こういうところは疎かになる。

――こういうことが大事なんですね。ほかにもありますか

四方 ライブではよくスモークが使われますが、特に油性のスモークをプロジェクターの内部に吸い込んでしまうと液晶パネルとか重要な部品を傷めてしまうんです。これを防ぐために、内部の光学ユニットに密閉構造を施しました。

西 スモーク対応はホントにたいへん。僕らもいろいろチャレンジしたけど、けっきょく外部からでは何をやってもどうにもならなかった。

石丸 こういうところに僕たちの購入動機があるんです。投影性能は基本だけど、現場が求めるのは、設置性の高さや堅牢性なんです。設置場所とか騒音、熱、ホコリ対策のために、現場にあれもこれも持って行かなきゃとなるのは非効率。EBL25000Uにはフレームが標準で装備されていますが、オプションのハンドルを本体の上にも付ければ、ポートレート設置(※2)も可能になる。そして360°どんな向きでも設置できる自由度の高さは、レーザー(方式)の恩恵ですね。

現場での使いやすさをとことん追求

西 駆動音はどうなの。

四方 冷却装置がファンだけではないので、そこそこ静かだと思いますよ(静音モードに切り替える)。

西 こんなに静かなの!?

石丸 これはすごいわ(笑)

西 他社製品では、スピーカーが付いていて、逆位相にして音を静かにするっていうのをやっていたね。あれ静かだけど、使っているうちにだんだん異音がするようになって、結局全部オフにする(笑)。消音システムは各社とも頑張っているけど、実際はあまり使えないんだよね。

――どんな利用用途が向いていますか。

西 これくらい静かなら、大学の講堂とか大ホールで行われる学会関係に喜ばれる。展示会とかコンベンションにも、このサイズなら仕事が増えそう。設置の自由度も高いから、当然プロジェクションマッピングでも活躍できる。マッピングは屋外が多いから設置性の高さはすごく大事。そして投写のときは、被写体が見えなくなるくらいオーバースペックで映すものなんです。それくらい明るくないと、マッピング効果が起きないから。このサイズで2万5000lmなら、そういう現場で使いやすくなると思う

――ほかに気に入ったところは。

西 フォーカスがいいね。ビシッと決まる。センターと端っこのズレも少ない。プロジェクターの画像って点が集まってできていて、点の周りは黒いんです。こういう白い画面でも、黒いベースに白い点があるんです。その点と黒い隙間との境目が気になるんです。白と黒のコントラストがぼやけないようにするためにフォーカスを取っていくんですけど、ほとんどの場合ビシッとこない。画面のセンターも端っこも均等にフォーカスを取りたいんだけど、レンズが歪んでいるから簡単にはできない。大画面に映写するとズレがよく分かるんです。だから、バランスの一番いいところで取るしかない。これ、僕らは凄くスゴくすごく妥協して映してるんです。

――そんなにすごい妥協なんですか(笑)。素人にはわかりませんね。

西 でも僕らは気持ち悪い(笑)

多彩な補正機能を組み合わせて使える

石丸 補正機能はどうなの。

四方 いろんな幾何学補正(※3)の組み合わせができるようにしました。

石丸 あ、スゲー!(細かく調整できる範囲の広さに驚いているもよう)

西 大型のマッピングをする時って、専用の調整機材が必要だけど、それがなくてもできちゃうかもしれない。こういうふうに補正機能を混ぜてできるようにしたいってリクエストしていたんです。あとリモコンのボタンもね。

四方 西さんには、ボタンの配置や形状、レスポンスまで、細かいご要望をたくさんいただきました。現場のみなさまにはとても重要なことばかりで、そこにお応えしないと、このクラスのプロジェクターは買っていただけません。

西 リモコンは慣れると見ないで操作するから。後ろ向きや、暗い場所で操作したり。イベント現場での調整は時間との闘いだから、1分1秒の差がすごく大きい。だから指先の感覚だけで操作できるリモコンってすごく重宝する。それにしても、エプソンさんはレスポンスがいい。すぐに「これ直してきました」って持ってくるモンね(笑)

――しっかりマーケティングして、厳しい西さんの要望にも応えているんですね。

西 少し前まで全然ダメでしたよ(笑)。でもレスポンスが急激に良くなった。僕たちは映像が綺麗なら良いってもんじゃないから。放送機器なら綺麗であればそれでいいんだろうけど。そこは要求のレベルがほかの業界と違う。

↑プロジェクターのリモコン。素早く正確な操作・調整を実現するために、ボタンの形状や配置にまでこだわったデザインが求められる。

マニアックに萌えるふたり

石丸 レンズを装着した時の前垂れ対策はどうですか。

四方 レンズのモーメントをしっかり計算したうえで、マウントのところが倒れないような堅牢な構造にしてあります。かなりごっついレンズマウントになりました。

西 レンズマウントの設計と実装は本当に難しい。他社も苦しんでいるところ。エプソンさんは今回新設計を開発して、ちゃんとやっていますね。

四方 ちょっと外してみましょうか。

西 あ、こんななの!?重っ。

石丸 ホントだ。こんな重さのレンズは久しぶりだな。

西 でも抜き差しも深くしっかりしていていいね!ズレがない。これちょっと気持ちいい!レンズの剛性がいい。

石丸 大切な部分がしっかりしてる!

西 電源を抜いて差した時の立ち上がりはどのくらい?

四方 抜いてもらっても、レーザーなのですぐに立ち上がります。

石丸 電源は。100(v)で動くの?

四方 輝度30%で仮駆動できます。


レンズの重量感、セッティングの感覚を楽しむ

EB-L25000Uのレンズ。大型プロジェクターで
は、一眼レフカメラのように本体とレンズがセパ
レートとなり、利用シーンや設置環境に合わせて
最適なレンズを装着する機器が主流。プロジェク
ター本体を買い換えてもレンズ資産を活かすこと
ができる。EB-L25000Uのレンズは、個性的な
マウント設計で堅牢性を高め、本体にしっかり装
着する。バリエーションも豊富に用意している。

――家庭用電源で動かせるんですか?

四方 もちろんフル稼働するには200vの電源が必要です。

西 僕らは屋外とか、必ずしもすぐそこに電源のある場所に設置するわけではないでしょ。まして200vなんてどこにでもあるわけではない。そういう時は、電気屋さんが引っ張ってくるまで、そこら辺の壁のコンセントから引っ張ってきて、できる調整を先にやるんです。

石丸 話しは変わるけど、ここ、ハンドルの四隅が補強されているから、カドんとこ掴めないでしょ。これ不便だわ。ここ持ちたいよ現場は。

西 エプソンさんならすぐ修正してくれるよね。

四方 いや、これは・・・

――こうやって良い商品ができあがっていくんですね(笑)

プロジェクターの可能性

――最近は、高精細のLEDディスプレイも出てきて、フラットパネルのマルチディスプレイも価値が高まっています。大画面演出という目的に対してプロジェクターの優位性はどうなるでしょうか。

西 LEDもマルチモニターも基本的には平面かちょっとした曲面でしか画面を構成できない。だから当然のことながら、曲面や凹凸、建造物にビジュアルを映すことはプロジェクターにしかできない。プロジェクションマッピングはサプライズな演出ができるし、場面転換もできる。それにLEDとは映像の解像感や質感が違う。ファッションショーなどの現場ではLEDを使うこともあるけど、髪の毛まで表現することはできません。そうなるとプロジェクターでないと嫌だというお客さんもたくさんいる。

石丸 EB-L25000Uくらい高輝度になれば、LEDやマルチディスプレイしか採用されなかった「とにかく明るくしたい」という需要に参入できると思います。そして、レーザーが可能にした360°設置で、設置環境が飛躍的に広がりました。利用範囲の応用は、ほかの映像機器よりプロジェクターの方が可能性を秘めている。水中で映すとか、雲とか月に映像を映すなんて夢を叶えられるとしたら、プロジェクターです。

――いかがですか、四方さん。

四方 プロジェクターの市場を伸ばしていくためには、いまお二人がお話ししたように、プロジェクターにしかできない利用方法を多くの人に知っていただかなければなりません。EB-L25000Uによってライブやイベントの世界に、初めて我々のプロジェクターが使われることになります。ワクワクドキドキですが、これが最終型ではないので、これからもみなさんの現場をしっかり勉強して、そこで得られるご意見を開発にフィードバックして、もっともっといい商品をお届けしたいと思います。


商品の細部にまで熱心に探求する。映像屋にしかわからない機材への愛が・・・

取材が終わってもディスカッションは続く。

〈今日の専門用語〉

※1
EB-L25000Uの冷却方式:密閉構造を採用し、自動車で使うラジエーターのような、熱交換効率が非常に高いシステムを採用している。このラジエーターと熱電変換素子(ペルチェ素子=電気を通すと片方が熱くなって片方が冷たくなるデバイス)を組み合わせ、環境温度くらいまで冷却水の温度を下げて密閉内部を冷やしている。「ペルチェってワインセラーの技術と同じだ~」と、ソムリエ並の知識と愛を抱く業界きってのワイン好き西さんも大感動の技術。本機では密閉の内部に吸熱用のラジエーターを配置し、密閉の外部に放熱用のラジエーターを配置。また、このラジエーターは自動車等で使用するものに比べて高効率なので、装置の小型化やファンを低回転化することが可能となり、ニシマルの二人が驚くような静音化を実現した

※2
ポートレート設置:プロジェクターをタテにおいて、縦長の画面を映す方法。これまでのランプ方式のプロジェクターはファンを使用し、ピンポイントで冷却する必要があったので、プロジェクターの姿勢を変えると風の流れも変わってしまうため、縦置きができない機種も多かった。レーザー方式では※1の通り、ファンに頼らない冷却方式が開発され、設置姿勢の自由度が広がった。

※3
幾何学補正:プロジェクターで曲面や凹凸など平面でない対象物に映すとき、またスクリーンに対して斜めの角度から映すときに起こる、画面の歪みを補正する機能。本機にはクイックコーナー、ポイント補正、曲面投写補正、コーナ投写補正、エッジブレンディングといった多彩な機能が搭載されている。

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